糖質は合法的に摂取できる麻薬 ◆ 「『糖質過剰』症候群」



著者は自らもメタボを脱したという医師の清水奉行さん。

 

ここ数年市民権を得た“糖質制限”。

 

書店には、履いて捨てるほどの書籍がならんでいますが、そのほとんどが軽いタッチのダイエット本。

 

しかし、この本は他とは一線を画しています。

 

論文のオンパレードでエビデンス重視。

 

そして「自己矛盾になるが・・・」と断りながら、何かとエビデンス重視の論調に関しても疑問を投げかけています。“企業がスポンサーにつく研究”の論文に信憑性があるのかと・・・。

 

 

清水先生は論文の信頼性を、“進化論”と合致するかどうかで判断しているようです。

 

 

新書でありながら、非常に読み応えのある1冊でした。

 

 

ほんでもって備忘録。

 



人類は長い間、糖質を得られる機会が非常に限られていたため、糖質を摂るとそれをエネルギーとして体に溜め込むように進化していた。さらに、わずかな糖質をできる限り多く摂取するために、糖質が吸収されると脳が反応し、報酬系と呼ばれる部位でドーパミンが分泌され、喜びを味わうように進化した。

 

 

 

実は糖質は、体を構築するものでもかければ、生き延びるために必須のものでもない。なぜなら、人間の体には、その他の栄養素を使って糖質を作り出すメカニズムがあるからである。

 

 

 

脂質悪玉説

脂質を減らしたのにもかかわらず、人類はどんどん肥満になっていき、病気が増加した。これまでは存在しなかった病気まで生まれてきた。何かが間違っている。そう思い始めた人が現れ、脂質が犯人ではなく糖質が犯人だと発言し始めた。人類はやっと間違いに気づき始めたのである。

 

 

 

医師はなぜ変わらない

大きな原因の一つとして、医学部の教育があると思われる。医学部教育ではほとんど栄養の勉強はしない。だから医師になった後でも、ほとんどの医師は栄養に精通していない。

 

 

 

医学部教育

教えられることは、「患者が糖尿病を発症したり心臓発作を起こした後、医師はどのような薬や手術を患者に選択すべきか?」なのである。つまり、最初に予防ありきではなく、問題が起きた後の治療最重視の教育である。

 



人体実験

脂質悪玉説という人体実験である。そして、脂質の摂取量を減らし、その代わりに糖質を増やした食事を摂った結果が、現在の悲惨な状況である。人類はこの仮説が間違っていることを、多くの犠牲者を出して証明したのである。

 

 

 

自分が生きている間に病気の因果関係が証明されることはほぼないと言ってよいだろう。刑事裁判であれば「疑わしきは罰せず」の原則でもよいが、自分の体のことであれば、「君子危うきに近寄らず」の姿勢のほうが身のためだろう。糖質は人体に必須のものでも何でもなく、危険なものであるから、近寄る必要はない。

 

 

 

人間の体は非常に優秀なので、非常にうまく問題を隠蔽する

 

 

 

人間は生き物であり、進化の過程があって現在に至っている。そして、いまだに不明なことも多い非常に複雑なメカニズムが、自分の知らないうちに働くことで生きている。だから、検査などだけではなく、進化と、今の時点でわかっている生物学、生理学、生化学的事実に照らし合わせて、病気というものを考える必要がある。

 

 

 

糖質は必須の栄養素ではない。糖質を全く摂取しなくても、人間は全く問題なく生きることができる。なぜなら糖質は、自分の体の中でつくることができるからである。

 



うつ病は、以前「心の風邪」などというキャンペーンが張られ、広く受診が勧められ、薬がどんどん処方された。製薬会社の戦略だ。その戦略に加担したのはもちろ医師である。

 

 

 

うつ病の原因は完全にはわかっていないが、脳の炎症が強く疑われている。その炎症を起こすのも、糖質過剰摂取による高血糖である。

 

 

 

うつ病をはじめ、ほとんどの精神疾患は糖質過剰症候群であるといえる

 

 

 

がんのエサは糖質である

 

 

 

高血糖や高インスリン血症、HDLコレステロール値の低下は、発がんリスクを増加させる。これらはすべて糖質過剰摂取で起きる。

 

 

 

イヌイットという北極圏に住む先住民族は、以前アザラシやクジラ、トナカイなどの高タンパク質高脂肪食を食べており、糖質はほとんど摂っていなかった。その頃は非常にがんが少なかったが、食事が西欧化すると、がんの発症が急激に増加したのである。

 

 

 

近視さえも糖質過剰摂取が原因の一つとなっていると考えられる。もちろん、遺伝や環境の要因は大きく関わっていると思われるが、近視は狩猟採集生活では敵や獲物を見つける際に大きな問題を起こし、生き残るには非常に不利なものであるので、遺伝子的要因の多くは排除されてきたとも考えられる。

 

 

 

糖質制限で明らかに改善する片頭痛

 

 

 

身長と寿命には関係があり、身長の低い人の方が長生きだと考えられている

 



様々な病気のリンク

糖尿病があると、心血管疾患をはじめ、うつ病アルツハイマー病、五十肩から緑内障など様々な病気が起きやすくなる。しかし、これは糖尿病がこれらの併発する病気を起こしているのではなく、根本原因が共通しているのである。その根本原因はもちらん、糖質過剰摂取である。

 

 

 

糖新生にはコストがかかる

1分子のグルコースブドウ糖)を新生するのに、ATPを6分子も必要とする。

中略

もし、進化の過程で人類が、いつでも豊富に糖質を得ることが可能であったのなら、わざわざコストをかけてまで、糖新生という仕組みは必要なかったと思われる。このことからも、人類は糖質をほとんど摂取してこなかったことが推測できる。

 

 

 

現在のような糖質過剰摂取状態では、脳がコントロールしきれないほどのブドウ糖が血液に流れており、血液脳関門ブドウ糖を大量に通過させてしまい、脳のブドウ糖濃度も非常に上昇しているものと思われる。脳に異常が起きるのも無理はない。

 

 

 

摂取するエネルギー量を同じにして、1日3回の食事と1日1回だけの食事を摂った場合の比較をした研究では、1日1回の食事の方が、体重も体脂肪率も低下・・・

中略

1日1食の方が空腹感を強く感じたにもかかわらず、ストレスホルモンであるコルチゾールは低下していた。

 

 

 

一般的な考え方では、朝食を抜くと体重増加につながると信じられている。しかし、この考え方は科学的研究にほとんど支持されていない。おそらく、多くの人が、朝食を食べることで売り上げが伸びる企業の戦略に乗せられているだけだと考える。

 

 

 

間食をしないと空腹感が辛いと思うのは、糖質過剰摂取の影響でインスリンが大量に分泌され、それにより高血糖から血糖値が低下し、ときに低血糖に移行するからである

 

 

 

果物

血糖値の上昇や、インスリン分泌が少ないので、間違って「健康的な食べ物だ」と思う人がいるのも無理はないが、果糖はブドウ糖よりも危険な内臓脂肪を増加させる。また、血糖値の上昇が少ないことやインスリン分泌を刺激しない分、脳に送られる食欲に関する信号(満腹だという信号)が減少してしまう。

 

 

 

糖質はただのエネルギー源ではない。脳に強く作用する。合法的に摂取できる麻薬と言っていいかもしれないほど、依存性があると考えられている。

 



糖質を摂ると、脳のドーパミンが大量に分泌されて、報酬系という部分が強く活性化される。報酬系が活性化されると、また繰り返したくなる。そしてまた糖質を摂ると、再びドーパミンが出て、脳がまた喜ぶ。これを繰り返していると、通常の状態ではドーパミンが減少し、糖質を摂るとやっと通常の状態まで上がるようになる。その先まで行くと、普通に糖質を摂っただけではドーパミン量は通常の状態にまでも上がらず、されに多くの糖質を摂らないと脳が喜ばなくなる。どんどん深みにはまっていくのである。麻薬と全く同じである。

 

 

 

糖質制限が広まることでケーキ屋さんやおにぎり屋さんがつぶれることはない。それは、この依存症による。

 

 

 

薬は、人体に本来から備わっている代謝のメカニズムに働く。そのメカニズムは決して不必要なものではない。人間の体にとって重要なものである。その代謝のメカニズムを阻害したり、弱めたり、強めたりするのが薬である。

中略

つまり、薬を使用するということの意味は、体の多くの正常な代謝を犠牲にして、不調な部分の代謝や異常な反応を改善するものである。

中略

これを考えると余計に、長期にわたり薬を飲むことが問題だとわかるだろう。体の悪い部分を根本的に治さないまま、症状だけを抑えていれば、薬を飲んでいる間にも、その悪い状態は進行してしまうからである。

 



現在、合法的に体に取り込むことができるもので、体に大きな害を与える可能性が高いものが二つある。一つはタバコである。そしてもう一つが糖質である。

 

 

実は、いくつもの薬を併用した場合、どのような有害なことが起きるか、誰も知らないのである

 

 

 

国も医師も栄養士も、糖質を50%~60%摂ることが健康に良いという証拠を持っているわけではない。エビデンスは全くないのである。現在のところ、どの栄養素をどれだけ摂ることが最も健康的なのかを決定することはできない。にもかかわらず、大量の糖質を推奨しているのである。 しかも、糖質が血糖値を上げることは国も医師も栄養士も知っている。それなのに、大量に摂取することを勧めているのは、他に大きな力が働いているのかもしれない。

 

 

 

たかが食事ではない。人間の体を作っているのは食事である。その食事が体の中でどうなっていくのかを考えずに適当に食べたり、宣伝文句につられて、健康よりもビジネスが目的の食品に頼っていては、医療のお世話になるのは目に見えている。

 

 

 

医学は栄養に関する研究をするには、膨大な資金が必要になることも多い。そのお金は企業から提供されることが非常に多い。そうなると、スポンサーの企業にとって有利な研究結果が出やすくなることは十分に考えられる。

 

 

 

信用できない論文

スポンサーは自社に不利になるような研究にお金を出すはずがない。自社製品に有利になるような立場で発表する。または競合他社の製品に不利になるような発表すると思われる研究のみに資金を提供する可能性が高いのは、当たり前である。

 

 

 

でんぷんへの適応

進化の過程で適応してきたのは、食物繊維の豊富な少量の塊根などのでんぷんであり、つい1万年ほ度前から食べるようになった大量の穀物にはまだ十分には適応していないであろう。ましてや大量に精製されたでんぷんである白米や小麦粉などに、十分に適応しているとは思えない。

 

 

 

食事に人間の体が合わせてくれるわけではない。何百世代後の遥か未来の人類は適応できているかもしれないが、残念ながら現在の人類は現在の食事には適応できない。だから、人間の体に食事を合わせるほかない。

 

 

 

かなりのエビデンスは示したが、その反対にエビデンスに対する不信感も同時に持っている。実に自己矛盾である。しかし、生物学は進化を考慮しなければ何も理解できないし、真実にもたどり着けないと思っている。

 

 

 

病気のほとんどは自分が作り出している。だからそれを治すのも自分である。医者や薬ではない。自分が食べているものが悪いから、体が壊れていくのである。あなたの車にサラダ油を入れて走っていたら、すぐに故障する。それと同じである。あなたの体に合ったエネルギー、栄養素が必要である。

 

 

 

ほとんどの人が糖質の依存症になっているので、どうしても糖質を擁護したくなる気持ちはわかる。しかし、食事に関しては、人類は明らかに間違った方向に進んでいる。

 

 

 

人間は予防が苦手である。病気になって初めて後悔する。時間は戻らないし。壊れた体もすぐには回復しない。

 

 

 

価値のある990円でした。

 

 

 

それでは・・・・。