「心なんかどうでもいい」金原俊輔著
副題は“大学生・高校生・中学生の悩みに答える森田療法”とあります。
でも、アドラーも「あらゆる悩みは対人関係の問題だ」と言っているように、大人にも当てはまります。というか根本は同じです。
金原さん、専門は“行動療法”で“森田療法”は一番の専門領域ではないと書かれています。それゆえでしょうか、アドバイスが非常に具体的でわかりやすい。実践的というのでしょうか?
読後の感想は、先日紹介した「森田療法のすべてがわかる本」で“森田療法”のアウトライン。「よくわかる森田療法」でさらに詳しく学んで、この本で日常生活に落とし込むって感じです。
森田療法のスタンスは「気持ちはコントロール不能」。大げさに考えず「行動をコントロール」して嫌々でも日常のタスクをこなしていこう。「気分本位」で生きると人生を豊かにできないという考え方です。
多くの自己啓発系の本や、精神分析の本が「気持ちのコントロール方法」を説きます。でも書店にこの手の書籍が、雨後の筍のごとくつぎからつぎへと積まれていくということは、どれも核心をついていないってことですよね?
うまくいかない場合は「読み手が悪い」っていうことになりますし・・・。
もはや“ダイエット本”や“英語マスター本”と同じような感じが・・・(笑)。
いろいろ試されても、尚すっきりしないというかた。“森田療法”をお試しあれ。
2016年もあと1か月。いやはや、いい本に出合えました。
というわけで、今回も備忘録長めです。
自分の心を大事にするのではなく、自分の行動のほうを大事にすべき
休まずに登校している人の気持ちだって、しょっちゅう乱れているのです。気持ちが整理されていなくても登校できるわけです。
「ああ、こわいな」と、素直にこわさを受容する人には、それ以上の不都合は生じません。
中略
こわいという気持ち自体をなくそうとするのは無理です。
中略
こわい対象を避けたらもっとこわくなり、対象に突入したらこわさは弱まる、こわさにまつわる心理としておぼえておいてください。
~を苦手でなくす努力をしてほしいのではなく、苦手なものを敬遠しない努力をしてほしいわけです
感情は行動にともなって動き出す
「まず自信をえて、その自信のもとでことにあたろう」と考えるのはまちがいであり、最初になにかを少しでもやったあと、それにたいして小さな自信がついてくる、そんなふうなものです
~に没頭できず、つい他のあれこれを考えてしまう、雑念が頭に浮かんできてしまう、というのはどんなに集中力がある人だって毎日経験しています。けっしておかしな状態ではなく、わたしたちの脳にそなわっている一時に複数の事柄を考えたり感じたりする機能、つぎからつぎに何かを考えたり感じたりする機能が、働いているだけのことなのです。
自己嫌悪
むやみに自分を責めると、きつくなってしまいます。
中略
そのときの友達のよくなかった点を思い出してみてください(かならず思いだせます)。
好きになるとか嫌いになるとかいう心の動きは、自分自身の心の動きとはいえ、自在にコントロールできるものではありません。
中略
行動のほうは自分でコントロールできますから・・・。
中略
表面的にはできるだけ失礼にならないような、接しかたをする・・・。
人生は、ある人と親しくなり、やがてその人と疎遠になる、という事態の繰りかえしです
他人にとって、あなたのおこないがあなたなのです。周囲の人々から理解されていないと感じるのは、あなたが思いこんでいるあなたとあなたのおこないとのあいだにズレがあるせいであって、人を恨んでもはじまりません。
あなたがこの先どんな人生をおくるにしても、他人との交わりをいっさいなくすことはできません。交わるときのために、人と接する技術のようなものはちゃんと身につけておくべきでしょう。
■やる気が出ない
やる気が出ない状態はどうしようもないものです。やらなければならないことがさしあたりあるのだったら、やる気がなくてもやってください。やる気があるからする、やる気がないからしない、などという気分本位な態度は、あなたの人生を豊かにしません。
よく「やる気を出してなにかに取りくむ」みたいなことばづかいがなされるものの、これはたんにそういう表現があるというだけのことであって、人の行動の真実を述べているわけではないのです。胸の奥のどこかに「やる気コーナー」があり、そこにやる気の塊が鎮座しているとでもいうのでしょうか。そんな空疎な表現にまどわされず、やる気などないままに眼前の用事を片づけてゆくべきです。
やる気は、出てくるのを待っていても出てきません。用事に着手したら、やる気がほのめいています。
周囲の人たちがくよくよしていないように見えるのは、その人たちが内心くよくよしながらも果たさなければならない用事をきちんと果たしているため・・・
中略
感情をどうこうしようとするのはやめて、くよくよしながら、そのとき、その場面で、しなければならないことをする、それを断行してください。
中略
そうすると、くよくよしながらも、全然くよくよしていない場合と同じように、ものごとをなしとげることができる事実に気づきます。
気分というものは流転してゆくものですから、何時間が忙しくすごすうちに、あるいは何日間か忙しくすごしているうちに、不愉快さはどこかへ行ってしまいます。
中略
気分なんかにかまわず、すべきことを着実にしていってください。
感情というものは、もてあましつつも他のことをしながら放っておくと、時間の経過にともなって小さくなり、消えていってしまうものなのです
イライラ
イライラしながらも他人に乱暴な言動をしめさないように注意すべきであり、これができればイライラしていないのと同じになります
身体の不調は安静、気分の不調は
あまりに安静にしすぎていると回復するためにかかせない外からの刺激が不足してしまい、元気になる力が起動しなくて、いつまでも重い状態にとどまるのです。
中略
休みをとるのはとても大事です。かならず休んでください。同時に、起きる時間や寝る時間を乱さない、毎日外出する、家事などをおこなう、といった適度な刺激が入ってくる生活を保っておく必要があります。
骨折で歩けない状態が一生つづくわけではないのと同様に、自殺したい気分や事情もずっとはつづきません(ずっとつづくのだったら、世の中の大半の人たちが自殺してしまっていることになります)。それをおぼえておいてください。
親のせいで・・・
人はだれでも性格面に問題をもっています。
中略
性格に欠点があるときは、それを自分の個性として認めるとか、自分がこうありたいと思う方向に変わる努力をするとか、いずれにしてもあなた固有の課題としてとらえればよいわけです。まるで幼児のように親をひっぱりだしてくる必要はありません。
「人はな、それぞれに心の傷を持っているものだ・・・。しかしながら傷跡が、人を支えもし、優しくもする・・・」マンガ鬼平犯科帳より
むかしの体験を呪っても不毛です。あなたがすべきことは、その体験をできるだけ自分や他人にとって意義ある方向にもっていく努力をすることなのです。
自分の性格を変えたい場合、今日や明日の、あなたのふるまいを変えるようにしてください。それも、現実の生活の中で変えていってください。
中略
いずれにしても、自分の内面だけを変えようとする的はずれな奮闘をしないように、気をつけてください。
勉強も、年賀状書きも、はずれたボタンのつくろいも、靴みがきも、ジョギングも、アイロンかけも、パソコンのダウンロードも、情緒が不安定なままにできます
赤面症に悩む人は、概して強い克己心をもっています。克己心が強いため自分の顔の色合いまでも統制を試み、「人前で絶対に赤くなってはいけない」と決めこんでしまうのです。
コンプレックス
このつらさは、私たちがだれもがもっている、他人に劣りたくない、ふつうでありたい、あわよくばふつう以上でありたい、という気持ちからくるものでしょう。
中略
あなたにできることは「人に劣りたくない」という気持ちのほうを活発にし・・・、自分の向上・発展をめざすことです。
早起き
用事を見つけだすこと、用事をつくりだすこと、これが早く起きるための条件です
ふつうの生活
人生というのは下りのエスカレーターにうしろむきになって乗っているようなもので、エスカレーターの階段を流れとは逆に上にむかって登りつづけなければ、今の高さを保てないものです。努力をやめると、低いほうに下がって行ってしまいます。ふつの生活というのは上に登ろうとするたゆまぬ努力で維持されており、今のままでありたいのならば、努力が必要なのです。
それでは・・・・。