努力してもなんともならないこと ◆ 「生物学的に、しょうがない!」



進化心理学”を私たちの日常に落とし込んだ、非常に面白い本です。

 

著者は明治大学で教鞭をとられている石川幹人先生。

 

 

この教授の著作、アマゾンではさほど評価が高くないですが、個人的には大好きです。

 

 

それでは、いつものように備忘録。

 

 



人間だって動物です。犬や猿が特別な訓練をしない限り空腹を我慢できないよいうに、人間にもできないとことや、ついやってしまうことがたくさんあります。

 

 

 

能力

他人にできることであなたにできないことがあるのは、当然です。同様に、あなたにはできるけど他人にはできないことも、必ずあるはずです。

 

 

 

何かができることも、できないことも個性なのです

 

 

 

人前で話すのが苦手

高校の教室はシカたちの和気あいあいとした集まり、大学の教室はシカたちの背後にオオカミが潜んでいるかもしれない危険な場所なのです。

中略

諦めなさい。見知らぬ人は捕食者だと思ってしまうのだから。

 

 

 

不安になる

不安というのは、小さな恐怖が慢性的に積み重なって解消されない状態です。恐怖というのは、生存が脅かされる危険な状態を避ける心の働きです。

中略

今の社会は死と隣り合わせではありません。自然界と違って、「誤った行動をとるとすぐに死んでしまう」と警戒する必要はないのです。

中略

ところがどっこい、人間はなかなか動物的な反射から抜け出せません。死ぬほどの問題ではないと頭ではわかっていても、警戒心が膨らんでしまうのです。これじつは、死にそうな恐怖が減ってしまったがために不安が膨らむという、皮肉な関係なんです。

 

 



太ってしまう

人類の歴史上、食料が豊富にある状態があまりなかったので、「歯止め」が進化しなかったことにあります

 

 

 

勉強嫌い

人間の歴史上で勉強嫌いが極端に不利になったことがないので、勉強嫌い遺伝情報が失われていないのです

 

 

 

衝動買い

紙切れのお金は早く交換して、現実の物で満足したくなるのです。

中略

衝動買いで経済がよりよく回るので、社会としては「衝動買い=推奨される行為」となります。だから、「別の物を買ったほうがよかった」と思ったら、またがんばってお金を稼ぎましょう。

中略

諦めなさい。お金より現実の物のほうに価値があると感じるのだから。

 

 

 

イライラ

大人がイライラするのは、幼児のように物を投げたり暴れたりできないからなんです。

中略

現代社会のルールでは「暴力なしよ」なのに、私たちの心の備えは「まず暴力をためしてみる」となっているのです。

中略

イライラを止めるには、活性化した脳を沈静化すればよいのです。それには「ため息」が効果大です。息を吐ききると、肺の空気がなくなり、脳への酸素供給が低下するので、活性化した脳細胞に栄養が行きにくくなります。酸素不足を感じた脳が、沈静化に向かうのです。

 

 

 

片づけられない

太古の時代から片づけるという作業をしてこなかったので、それに伴う能力が生物学的に進化していないからです。

中略

私たちは物を多く所有したがるので、スペースを超えた量の物が家にあるのです。

中略

あなたが物を捨てられないのも、ごくあたり前です。現に少しなら物を所有していたほうが、生活に有利ですよね。でも片づけられなくなるのは、物の持ち過ぎなのです。

 

 



動物は衣食住が足りていれば現状維持になってしまい、やる気がでません。

中略

現状がそこそこ生きられる状態ならば、利得と損失を比較すると損失のほうが、問題が大きく感じられるのです。

 

 

 

雨の日に出かけたくない

これには、狩猟採集時代の生活習慣が影響しています。獲物の狩りや木の実集めをしていたころ、天気は重要でした。雨が降っていれば、そうした作業の効率がひどく悪くなるので、仕事はお休みです。

中略

そうした環境では、天気に左右されないで元気よく仕事に出かける人々の集団と、雨の日は静かにしている人々の集団で、どちらが生き残りやすいでしょうか。当然、後者ですよね。生き残った私たちは、「雨降りでふさぎ込む心理」を獲得した人々の末裔なのです。

 

 

 

後悔

後悔は、過去の選択を気にする心理です。「よくない状態になったのは、自分の選択が失敗だったからだ」と思っての反省です。そうすれば、次に同じ状況に出会ったときによりうまく選択できるので、「後悔する傾向」が遺伝子には組み込まれているのです。

中略

後悔すると行動の成功率が上がるので、本来後悔はいいことなのです。

 

 

 

幸せなはずなのに・・・

生物学的に感情は、動物の行動を起こしたり方向づけたりするものです。現状が満ち足りた状態であると、新たな行動を起こさなくてよいので、感情が喚起される必要がないのです。つまり、幸せなはずの状態では、幸福感は喚起されないのです。じつのところ幸福感は、「これから良い状態になるぞ」という期待によってもたらされるのです。

中略

現代社会は「選択肢が増えた不幸な社会である」と主張する学者もいます。一見「選択肢が増える」と幸せに思えますが、あまりに増えると選びきれなくなります。そこで「もういいや」と適当に選ぶと、後でもっといい選択肢があったことがわかり、悔やんで不幸になってしまうのです。

中略

まあ、ネガティブになったら、ネガティブさは「現状が幸せなことの証しだ」と思いながら、ちょっとだけがんばるのがいいでしょう。

 

 

 

整形に対する反感

私たち人間は、個体識別を顔によって行ってきました。狩猟採集時代では、しっかり協力する人かそれともタダ乗りかを見分ける必要がありましたが、それは主に顔によってなされていたでしょう。文明が始まってほかの集団との交易が行われるようになりましたが、そこで必要な「信用できる他者」の識別も顔が大きなてがかりになっていたに違いありません。今日使われる「顔がきく」や「顔パス」などの言葉もその歴史を物語っています。つまり、顔などの外見を整形によって変化させると、個体識別の手がかりが揺らいでしまうので、信用を欠く恐れがあるのです。

中略

言いかえれば「相互の識別に大切な外見に手を加える人は信用がおけない」という思考が、自動的に働いているのです。

 

 

 

私たちの心は、「狩猟採集時代にチューニング」されているのです

 

 

 

ウソを見抜くことが非常に不得手

狩猟採集時代では、ウソに効果があまりなかったのでウソをつく人が少なく、そのため、ウソを見抜く能力も進化しなかったのです

 

 



カリスマ

私たちは苦境に立たされると希望を求めます。そして、その希望を断言してくれるカリスマに、よく考えることもなく、ほれこんでしまうのです。そしてカリスマは往々にして恐怖感情が低いのです。「自分が言った通りにならなかったらどうしよう」などの不安はありません。だからこそ、心の底から希望を断言でき、それを聞いた人々の信用を勝ち取れるのです。

 

 

 

世の中には、「目標を立てろ」「根性で必達だ!」などのスローガンがあふれています。競争意識をあおったほうが経済が活性化するので、その手法が経営者の間で横行しているのです。

中略

結局、最後には達成できなかったむなしさだけが残るのです。こうして個人が不幸になっても、社会のほうは着実な経済成長を達成するのです。

 

 

 

頑丈な家でも建築部品の耐久年数があり、50年も100年もするといろいろ部品が壊れてきます。やがて、修理するより建て直したほうが安上がりなるのです。人間の身体もそれと同じで、年をとるといろいろ故障が増えていきます。遺伝情報の戦略としては、自然治癒力を発揮しても追いつかないので、建て直しよいとなるのです。それが寿命です。

 

 

 

やる気

衣食住と安全が確保されれば「現状維持」でいいので、やる気はでないものです。

中略

現状が悲惨なときほどやる気が出るのです。

 

 

 

ちょっと気が楽になる1冊なのでした(笑)。

 

 

 

 

それでは・・・。